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Need for Speed: Paybackはお前をHorizonする

去る11/10に発売されたNeed for Speedシリーズ最新作ことNeed for Speed: Payback、当然皆発売日にダッシュで購入して楽しんでる…わけではないのが世の悲しいところです。が、楽しいゲームだったので紹介しておきます。

Need for Speedとは

Need for Speedといえば、EAの看板IPにして、今年(2017年)で23年目になるレースゲームの超名門シリーズですが、恐ろしいことに「シリーズとしてのアイデンティティ」が異常なほど希薄なことが特徴です。敢えてNeed for Speedの特徴を挙げると

  • 実在の車が登場する
  • 警察車両がプレイヤーを襲う
  • 車の外観を豪快にカスタマイズできる
  • 所謂アーケード系ハンドリング
  • アウトローとしてのストリートレーサーが主人公
  • 近作ではAllDriveなる非同期オンライン対戦要素がある

等がありますが、シリーズ23年の歴史において上記で一貫しているのは「実在の車が登場する」ことだけです。

これは本当に起こったことですが、「アウトロー(荒くれさんチーム)と警官(公僕さんチーム)が延々と潰しあいを行う車相撲ゲームことNFS: Hot Pursuit(2010年版。1998年に同名作品あり)」の続編が「実在サーキットでの若干アーケード風味なシミュレーター系のShift2(本作のみタイトルにNeed for Speedを冠していない)」になり、更にその続編が「巨大な岩が降ってきたり、巨大な雪玉が落ちてきたり、電車が走ってるトンネル内だったりと、危険極まりないアメリカ大陸のキャノンボールレースを行うNFS: the Run」止めにその続編が「何もない空間から車が生えてくるNFS: Most Wanted(2012年版。2005年に同名作品あり)」だった、といえば如何に一貫性のないシリーズかお分かりいただけるかと思います。

Most Wanted(2012年版)の車が生えてくるシーン。新車をゲットするとそれぞれに超クールな映像が流れる。カットシーンでもパトカーが合体し、観ちゃん(from ガールズアンドパンツァー)と化して襲撃してくるシーンなど、突き抜けた世界観がある。

同じ”レースゲーム”ジャンルで20年近く続いているグランツーリスモや、デイトナUSA(昨年、アメリカのアーケードで3が出たらしい)、マリオカート等は、タイトルを聞けば何作目か分からなくてもどのようなタイトルであるかは一目瞭然でしょう。シリーズの一貫性のなさを鑑みると、生き残ってしまったリッジレーサーといった風情があります。

今回のNeed for Speed

さて、幾ら一貫性がないとはいえ、シリーズを追いかけてきてスレたファンたちは、毎回Tralerを見て「今回はこの路線なのか!買う!」と宣っては、Originのアンロック日を心待ちにしていますが、今回のTralerはこんな感じでした。

Need for Speed: PaybackのGameplay Trailer。因みにその後公開されたStory Trailerで描写される内容はDLCなしでクリアしたところ、一度も出てこなかった。

これ見たら、まあファンなら「the Runらしいシネマティックなシーンを遊ぶレースゲームなのか」と考えるところですが、実際にプレイしてみたところForza Horizonフォロアーだった、というのが本作の底知れないところです。

何がどうしたらあのTrailerでForza Horizonなんだよ、というのは100人いれば100人抱くだろう疑問ですが、何のことはなく、Trailerで描かれていたのは本作のストーリーミッションだけで、それがHorizonでいうところのスペシャルイベント(ジャンプで機関車飛び越えたりしたりする奴)だったわけです。

大まかなゲームフローとしては、

  1. ストーリーミッションをクリア
  2. 各種イベントがアンロック
  3. オープンワールドでイベント間を移動
    1. オープンワールド内にスピードトラップや、タイムアタック、ジャンプ距離などのチャレンジ
    2. 破壊できる看板等のコレクション要素
    3. 特別なカスタマイズが出来る旧車の探索
  4. イベントやチャレンジをこなして溜まったマネーで車の購入や強化
  5. 一定のイベントを完了すると次のストーリーミッションがアンロック

と、ほぼ完全にForza Horizonです。

じゃあパクりじゃねえかという話になりますが、それこそが本作の魅力です。Need for SpeedブランドでForza Horizonを作った、というのが重要です。

Forza Horizon自体が、Forza Motorsportのスピンオフだったわけですが、オープンワールドを自由に走行するコンセプトとForzaという看板が個人的にはあまりマッチしてませんでした。Horizonがアーケード路線のハンドリングで調整されてるのはいいんですけど、Forza Motorsport側のシミュレータ風挙動も継承していて中途半端な印象が否めませんでした。

そもそも”オープンワールドレースゲーム”というサブジャンルの先駆者は他ならないNeed for Speed: Underground 2なわけです。ただNeed for Speedがストーリー描写を重視することから「雄大なオープンワールドを自由に走り回る」Horizon路線にフォーカスしなかった、というだけで、Horizonをプレイしても「これをNeed for Speedで作ってくれれば…。」という思いが否めませんでした。

意識の低いオープンワールドレースゲームとしてのNeed for Speed: Payback

先ほど「一貫性のないシリーズ」と言ったのは一旦忘れてもらって、アーケード系ハンドリングなオープンワールドレースゲームの楽しさというのはNeed for Speedが切り開いてきた(そして無数の失敗を繰り返してきた)といっても過言ではありません。やっぱりNeed for Speedはプレイしてて心地が良いわけです。

長い年月をかけて培ってきたハンドリングの味付けや、直線とカーブの緩急、眼前に広がる多彩なロケーション、自然なロケーションの切り替わり、加速を演出するエフェクトなど、Forzaみたいにお高くとまってないで「プレイヤーを気持ちよくさせる」ことが第一義のエクスプロイテーションな作風はこれだよこれという気持ちになります。

グラフィックスも延々と夜で陰気極まりなかった前作とは一転、Forza Horizonを参考にしたのか、市街部に峠、砂漠に山岳とバリエーションに富み、またEAご自慢Frostbite Engineがいい感じにライティングしてくれます。特に昼夜のサイクルが導入されて、その場所、その瞬間の風景が驚くほど映える瞬間があります。特に朝の表現は当代トップクラスです。

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様々な表情を見せるライティングと、豊かなロケーション。Titanもいた。

また、普通のレースゲームだったら「これから赴くロケーションに合わせて車のセッティングを行おう」と、ダートタイヤに替えたり、トルク増やしたり車高を上げたりしてたんですが、本作はレースの種類に応じた「ビルドタイプ」なるものが用意されており、それぞれの車が「これはオンロード」「これはドラッグ」と、レースタイプ専用に設定されます(恐ろしいことに後から変えることはできない)。車の加減速、ドリフト挙動、ハンドリング等は全てビルドタイプが基準になり、車ごとの差異は、ビルドタイプに比べて全然影響の少ない「加速が少し良い」「ニトロが少し長い」程度に抑えられています。この結果として、車種ごとの挙動の違いや、リアリティのあるセッティングを失った代わりに圧倒的なコンビニ感覚でゲームプレイに突入できるようになってます。しかも、車種毎に選べるビルドタイプは限られるものの「オフロード仕様のポルシェ911」「ドラッグレース仕様のPagani Zonda」など、常識的なレースゲームでは生まれようのないシチュエーションがプレイアブルに実現できるようになりました。

ゲーム内で入手できる旧車のカスタマイズは更に狂っており、ビルドタイプに応じた特別なビジュアルがビルドタイプ毎に用意されています。「ウィリーバーの付いたVW Beetle(ウィリーバーがビジュアルにしか作用せず、実際のゲームプレイに一切作用しないのもポイントが高い)」「車高が滅茶苦茶に上げられたオフロード仕様Chevrolet Bel Air」等、ゲーム中に目にするとまず自分の目を疑います。

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オフロード仕様でスペシャルなビジュアルを適用したChevrolet Bel AirのBefore / After。

また、オープンワールドのゲームには常に「広いのはいいけれど、結局やることはイベントスタート地点への移動を延々繰り返すだけでしょ」問題を孕んでいます。今年の「ゼルダの伝説 Breath of the Wild」は見事にこの問題を打破し称賛されましたが、オープンワールドレースゲームの嚆矢たるNeed for Speedも前作Need for Speed(2015年版。リブートという体でサブタイトルはなし)の時点で手を打っていました。ミッション間の移動が退屈なら、至る所に無数のアクティビティを打ち込むという力技です。

本作でもその特徴は堅持しており、20秒走れば絶対に何かのアクティビティにぶつかるという滅茶苦茶なゲーム密度です。雑といえばそれまでですが、基本的にどこに行ってもすることがあるのは退屈しないという意味ではデザインの意図が十全に発揮されています。

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Far Cry 4を彷彿させる、アクティビティで埋め尽くされた本作のマップ。

しかも、それに加えて収集要素としての看板破壊、コイン収集、旧車パーツ収集等があります。それぞれ、微妙に意地が悪い配置をされており、一つこなすのに平均1分以上かかるんですが、それが165(看板30、コイン100、旧車パーツ35)と、誰がやるんだよコレといった感じですが、作った側の努力は認めるとか気合は感じるとかそういう方面の要素です。

ボリュームの不足と絶望的なストーリー、最悪のstuttering

さて、ここまで基本的に褒め殺してきましたが、本作のプレイ中、ずっとプレイヤーにのしかかってくる一つの数字があります。ポーズメニューから確認できる「ゲームの進行度」です。

30を超える車種が並ぶディーラーを見て「ゲームを進めていけばこれらを入手するようになるのか」と思うのも束の間、レースをこなしても得られるゲーム内マネーはショボくれており、殆どマシンの強化に投入している間にみるみるゲームは進行し、結局ゲーム内ディーラーで車を入手するのは、最初のチュートリアルを合わせても3回で済んでしまい、気が付いたらクリアしている始末。

マシンのビルドタイプもレース、オフロード、ドラッグ、ドリフト、都市部の逃走用と5種類用意されてはいますが、それぞれのレースに決められたマシンタイプでないと参加できないにもかかわらず、マシンタイプごとのレースは15-25回程度しかないので、わざわざ5マシン管理する必要あったのかよという気分になります。特にドラッグやドリフトのビルドタイプについては「きっと最終イベントで使うのだろう」と、全種類強化した挙句、使うのはレースとオフロードだけだったときは衝撃を受けました。更に恐ろしいことに、オンラインでの対戦でも使えるのはレースとオフロードだけです。残りの3つの存在価値は…。

また、シネマティックなゲームプレイを含むメインイベントに至っては6つしかなく、そのうち2つはTrailerで公開されている始末。これは売り方の問題なんで作ってる方が100%悪いってわけじゃあないですが、それでもTrailerみたいなゲームプレイを期待した向きは全力で裏切られます。

また、脚本も本当に絶望的です。ゲーム展開としては「こういうアクションをやりたい」という繋ぎはまあ成立しているとして、全てのセリフがクソ。80年代のパルプ映画から無差別にピックアップして適当に並べたんじゃねえのというレベル。

物語も「ラスベガスっぽい地域でレースを牛耳って八百長で荒稼ぎしてるハウスなる連中をレースで叩き潰す」なんですが、「冒頭で主人公を裏切った奴がハウスに入って八百長を仕切り、街を代表するレースで主人公に敗北、主人公に対して全額を逆張りしていたハウスは一夜にして崩壊」って、全額はねえだろ、少しは考えろよ!

後、PC版の話になりますが、stutteringが酷い。フレームレートが若干落ちる程度なら許せるんですが、メインゲームループが追い付いてないのか数10ms、ゲーム進行どころか音声まで止まるのが頻繁に起こります。しかも発生条件がよく分からず、ストリーミングで発生してるのかと思えば、静止している時にも起こったりするので、原因を推定することもできない。いきなり30ms止まったりするのはレースゲームとしてはかなり致命的です。

最後に

当初、本作のMetascoreが67点と知り「いや、それはねえだろForza Horizon 3と比べても5点差くらいだって」と言っていましたが、クリアした今としてはさすがに撤回します。それでも67点は低すぎだと思いますが、70点台くらいのゲームではあります。

ただ、そのゲームが好きか嫌いかは点数とは関係ないですからね。プレイしてる最中は、ゲーム進行度さえ見なければ本当に楽しく遊べてましたし、一気呵成に4日程度でクリアしてしまうくらいには没頭しました。

Need for Speedはシリーズをシリーズ足らしめる特徴がないという話をしましたが、やはり歴史あるシリーズの味付けみたいなのはあるんですよ。本作の味付けが性に合ったら、別の作品も手を出してみてください。

当方としてはMost Wanted(2005)、Underground 1、the Run、ProStreetあたりがお勧めです。